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2010年代では、「インターネット通販を行うなら出店型ECモール」という流れがありました。しかし、近年自社ECへの注目が高まっています。この記事を読んでいる方の中には、自社ECとECモールのどちらがいいか迷っている方もいると思います。

そこで、この記事では自社ECとECモールのメリット・デメリットの比較や、自社ECを選択した場合の成功ポイントと成功事例を紹介します。自社ECを始める手順についても解説していますので、自社ECかECモールかを決めかねている方は、この記事を読んで自社にどちらが合っているかの判断の参考にしてください。

自社ECとは?

自社ECとは?

自社ECとは、企業が独自のECサイトを構築し、販売・運営することです。

また、自社ECのほかに、楽天市場やYahoo!ショッピングといったECモールに出店する方法もあります。

近年はECサイト・ネットショップを構築するためのECカートシステム(※1)がさまざま開発されており、システムに関する知識がなくてもECサイトの構築が可能です。そのため、EC事業を始める際にECモールではなく自社ECを選択する企業も増えています。

※1 ECカートシステム:ユーザーがECサイト・オンラインショップで商品を購入する際に、必要な機能を持ったシステム

自社ECとECモールのメリットデメリットを比較

自社ECとECモールのメリットデメリットを比較

自社ECとECモールのメリットとデメリットはどのように違うでしょうか。それぞれ比較してみました。

自社EC ECモール
メリット ・販売手法やデザインなど自由度が高い

・ブランド力を高められる

・顧客情報などのデータを集積できる

・顧客育成ができリピート率が高い

・集客がしやすい

・販促企画やキャンペーンを利用できる

・ECが初めてでも始めやすい

デメリット ・集客に時間的・金銭的コストがかかる

・販促やマーケティングの知識が必要

・価格競争になりやすい

・ECモールの仕様によって独自性が出しにくい

・データ収集できる範囲が限定される

イニシャルコスト(初期費用) 小中規模ECサイト:無料~数百万円

大規模ECサイト :数百万円~

モール掲載:無料~
ランニングコスト(月額費用) 小中規模ECサイト:無料~10万円以下

大規模ECサイト :10万円~

(決済手数料は別)

無料~

(決済手数料、ポイント原資負担、キャンペーン原資負担は別)

集客力や始めやすさではECモールが優勢ですが、ブランディング力やリピート率では自社ECに強みがあります。具体的にどういったメリットデメリットがあるのか、以下で詳しく見ていきましょう。

自社ECのメリット

自社ECのメリットは次の4つです。

  • 販売手法やデザインなど自由度が高い
  • ブランド力を高められる
  • 顧客情報などのデータを集積できる
  • 顧客育成ができリピート率が高い

それぞれの内容を詳しく解説します。

販売手法やデザインなど自由度が高い

自社ECでは販売手法やデザインを自由に決められるのが特徴の1つです。利用するECカートによっては、機能による制限やデザインのテンプレートに限りがある場合もあります。しかし、どのECカートを利用するのかも含め、自社で決定できるということが自社ECの強みです。

例えば、さまざまなオプションを追加して、製品をカスタマイズできる仕組みにしたり、ブランドイメージに合ったサイトデザインにしたりできます。リピート通販を行う際にも、独自のルールを適用することができ、販売手法の幅を広げられるでしょう。

ブランド力を高められる

自社ECでは、お店のブランド力を高められます。ECモールで買い物をしていて、どこのお店で買ったか覚えていないことはありませんか?ECモールの顧客は、どこで買うかということよりも、どのくらいお得かということを優先するため、お店の個性が活かしにくくなります。

一方、自社ECでは、顧客はそのお店を目指して訪問してくれることがほとんどです。「このお店のこの商品が欲しい」と思って訪れてくれるため、お店のファンにもなってもらいやすくなります。

顧客情報などのデータを集積できる

自社ECでは顧客情報や購買データの獲得・集積することができます。利用するECカートによっては、自社独自のデータを収集できるようにカスタマイズも可能です。無料で利用できるECカートでも、氏名や住所を始めとした基本的なデータは収集できるようになっているため、売上アップの販促などに活用できます。

ECモールとの大きな違いは顧客情報の収集です。ECモールでは店舗側は顧客情報の一部しかわからないことが多く、顧客別の購買データなどが集積しにくくなっています。どういったお客さまがどのように行動したのかは、ECにとって非常に重要なデータですので、これらを自由に集積できるのは自社ECの強みと言えます。

顧客育成ができリピート率が高い

自社ECはブランディングのための施策が自由にできるので、顧客にファンになってもらいやすくなります。店舗のファンとなった顧客は何度もリピートし、さらには自分の周りの人にもおすすめしてくれるでしょう。

自社ECでは顧客とのコミュニケーションも自由な方法で行え、ECモールよりも顧客との距離が近くなるため、リピート率が上がります。

ファンになってもらう仕組みをいろいろと実践できるのは、自社ECならではです。

自社ECのデメリット

自社ECには2つのデメリットがあります。

  • 集客に時間的・金銭的コストがかかる
  • 販促やマーケティングの知識が必要

どういったデメリットかしっかり把握しておきましょう。

集客に時間的金銭的コストがかかる

自社ECでは集客に時間とお金がかかります。すでによく知られているブランドや店舗でない限り、自社ECをオープンさせてもお客さまにはなかなか来てもらえません。お客さまを呼ぶには、広告や検索エンジンの上位に表示されるSEO対策が必要です。

SEO対策がうまくいけば、検索結果からの安定した集客が見込めます。しかし、新しいECサイトは検索エンジンからの信頼が低いため、すぐには効果がでません。SEO対策は時間をかけてじっくり取り組み、その間は積極的に広告展開を行うのがいいでしょう。広告も闇雲に出すのではなく、しっかり効果検証を行いながらより効果が高いところに投資するようにします。その際、広告効果を測定できるECカート機能があると便利です。

販促やマーケティングの知識が必要

自社ECでは、EC担当者に販促やマーケティングの知識が必要になります。自由に運営できる分、どう集客するか、リピート率をどう高めるかは自社の戦略次第です。戦略を立てずに運営していたのでは、自社ECでは売上は上がりません。

自社ECの経験がない企業では、担当者に十分な知識がないこともあるので、そういった場合は外部のコンサルやパートナーを活用して自社にノウハウを溜めていく方法もあります。最初から自社だけで行おうとせず、外部の力を活用することも重要でしょう。

ECモールのメリット

自社ECに対して、ECモールのメリットは次の3点です。

  • 集客がしやすい
  • 販促企画やキャンペーンを利用できる
  • ECが初めてでも始めやすい

具体的にどういった内容か説明します。

集客がしやすい

ECモールは、ショッピングモールに複数のショップ・店舗が出店しているようなイメージです。

ECモールは楽天市場やYahoo!ショッピングなど、モール自体に知名度があるため、店舗が集客を行わなくてもモールを訪れる人が多くいます。よって、ECモールに人が集まるので、モール内で販促活動を行えばそれなりの集客も可能です。さらに、モールを訪れる人は購買意欲が高いため、店舗を訪れてもらえれば購入の可能性は高くなります。

自社ECの場合は店舗を知ってもらうところから始めなければならず、購入に至るのはその先です。すぐに売上になるという点では、ECモールは強いと言えます。

販促企画やキャンペーンを利用できる

ECモールでは集客のために、定期的な販促企画やキャンペーンを実施しています。ECモールの店舗はモールの企画に参加することで集客に繋がるため、販促企画の立案を行う必要がありません。ただし、キャンペーン参加に伴うポイント付与料など追加の費用負担が生じる場合があります。

ECが初めてでも始めやすい

ECモールは、EC初心者でも簡単に始められるのが魅力です。店舗をデザインできる範囲が限られており、ロゴやバナーを設置するだけでお店が作れます。ECに必要な機能は揃えられているので、自分たちで構築する箇所はほとんどありません。ただし、受注件数が増えるとECモールのシステムでは対応しきれなくなるため、外部の基幹システムの利用が必要になる場合があります。

また、ECモールにはマニュアルや店舗オーナー向けのセミナーなども用意されており、ECを勉強する環境が整えられています。ECを初めて行う場合は、ECモールを勉強場所として利用するのもいいかも知れません。

ECモールのデメリット

ECモールのデメリットは3つあります。

  • 価格競争になりやすい
  • ECモールの仕様によって独自性が出しにくい
  • データ収集できる範囲が限定される

どういったデメリットかを以下で解説していきます。

価格競争になりやすい

ECモールは、同じカテゴリーの商品価格が比較しやすいため、価格競争が激しくなります。ECモールを訪れる顧客は、同じ機能の商品なら、より安いものを買いたいと思っているため、価値があっても価格を下げなければ売れにくいのです。

また、ECモールの表示ルールが価格重視になっている場合、他店よりも高い価格では検索表示ですら見てもらえません。いくらいい商品だと商品説明などでアピールしても、価格重視となってしまえば価格競争に参入せざるを得ないでしょう。

ECモールの仕様によって独自性が出しにくい

ECモールでは、店舗が独自でデザインできる範囲はごくわずかです。そのため、デザインで店舗の独自性を演出しようとしてもなかなかできません。ECモールの特色が強く打ち出されるなかでは、店舗の個性は発揮されず、お客さまはどこで買い物をしたかもわからない状態となります。

ECモールで店舗の独自性を打ち出したい場合は、お客さまに必ず見てもらえる同梱物に工夫を凝らすなど、ひと手間が必要でしょう。

データ収集できる範囲が限定される

ECモールでは、ユーザーデータの収集ができる範囲が限定され、自社で必要なデータを設定することができません。例えば、広告に関するデータを収集したい場合、ECモール内で行った広告データは収集できますが、それ以外でのデータは収集できないため外部のツールを利用する必要があります。そのため、顧客データを活用した分析は困難になり、顧客データに基づいたマーケティング施策を実施することは難しいです。

自社ECでは、カスタマイズできるECカートを利用することでデータ収集の幅を広げることや、収集したデータを自社に合わせてアレンジすることも可能です。そうした柔軟性がないこともECモールのデメリットと言えます。

自社ECは長期的な視点でのメリットが多い

自社ECは長期的な視点でのメリットが多い

ここまで、自社ECとECモールのメリットデメリットを比較してきました。自社ECはECサイトの構築と集客の面で難があるものの、店舗のブランディングが成功すればリピート客がつき、出店料もなく高い利益率を確保できるため、長期的にみるとメリットが多いと言えます。

他方、ECモールはEC初心者でも短期間で始められ、集客のハードルも自社ECに比べると高くありません。しかし、他店舗との価格競争に巻き込まれ、利益率が低いなかで運営せざるを得ない状況になる可能性もあります。また、ECモールの運営方針変更などに売上が左右される恐れもあり、長期的にみて安定した運営ができるとは言えません。

もし自社商品が他社と差別化できるものであれば、自社ECに挑戦することをおすすめします。将来的に、「このお店のこの商品が欲しい」という顧客に利用してもらえるよう、ブランディングを行って自社ECを育てていきましょう。

自社ECを始める6つの手順

自社ECを始める6つの手順

自社ECが長期的に考えてメリットがあることがわかりましたが、具体的にどうやって自社ECを始めるのかを解説します。自社ECを始める手順は次の6段階です。

  1. 独自ドメインを取得する
  2. コンセプトを決める
  3. 自社ECに必要なカートシステム機能を洗い出す
  4. ECカートシステムを選定する
  5. ECサイトを構築する
  6. テスト運用・トレーニングを行う

どういったことを行うのか、詳しく見ていきましょう。また、別記事「ECサイト構築を徹底解説!構築手順や費用・おすすめ会社6選もまとめて紹介」もご参照ください。

1、独自ドメインを取得する

まずは独自ドメインを取得します。独自ドメインとは、店舗のURLになるものです。https://.の後に続く文字列になります。「Google.co.jp」で説明すると、「Google」の部分は希望する文字列にでき、「.co.jp」の部分は選択できるものの中から選びます。すでに使われているドメインは利用できません。文字数は3文字以上63文字以下で設定できますが、あまり長すぎると覚えてもらえないため、できるだけ短くするのがおすすめです。

ドメインはレンタルサーバー会社やドメイン管理会社で取得できます。価格はドメインによって異なり、月額または年額の維持費が必要です。更新を忘れるとドメインが利用できなくなりますので、注意しましょう。

2、コンセプトを決める

自社ECを始める際には、店舗のコンセプトを決めます。コンセプトとは、「誰に何をどう売るか」ということです。

ECを始める以上、販売する商品は決まっていると思いますが、具体的に「誰にどうやって」という部分があいまいになっていることが少なくありません。この部分をしっかり固めることで、店舗のデザインや販売方法が明確になり、ECサイトの構築もスムーズに進みます。

3、自社ECに必要なカートシステム機能を洗い出す

自社ECのコンセプトが決まったら、必要なカートシステム機能を洗い出します。カートシステムとは、ECサイトに必要な買い物かご機能や受注処理機能が搭載されたシステムのことです。

自社ECのコンセプトが定期購入販売であれば、カートシステムには定期購入のための機能が必要となります。また、SNSを中心に集客を行うのであれば、各SNSとの連携機能も、Web以外で電話やカタログからの注文を受ける場合には、それらを処理できる機能も必要です。このように、自社ECのコンセプトに従って必要な機能を1つずつ確認していきます。

4、ECカートシステムを選定する

必要な機能を整理できたら、ECカートシステムを選びます。ECカートシステムは無料で始められるものから、初期費用数百万円〜のカスタマイズ性の高いものまでさまざまです。

無料のECカートは基本的に機能のカスタマイズには対応しておらず、小規模なECサイト向けに作られています。中規模以上のECサイトを構築する場合は、機能のカスタマイズ性が高い「パッケージ型」がおすすめです。ECに必要な機能が搭載されていて、なおかつ自社に合わせて改変できるため、構築期間や費用を抑えられます。費用だけにこだわらず、自社ECの規模に合わせてECカートシステムを選びましょう。

5、ECサイトを構築する

ECカートシステムが決まれば、いよいよECサイトの構築です。小規模EC向けのECカートシステムを利用する場合、自社で設定などを行うことになるでしょう。とはいえ、必要な項目は用意されていますので、ガイドに従って入力していけば設定できます。どうしても不安なときには、ECカートシステムとパートナー契約をしている制作会社に依頼するのもよいでしょう。

中規模以上のECサイトの場合は、EC構築会社と打ち合わせを行いながら構築していきます。特に機能のカスタマイズがある場合は、EC構築会社に丸投げせず、自社の業務フローに合ったシステムになるように構築会社と協働して進めましょう。

6、テスト運用・トレーニングを行う

ECサイトが構築できたら、テスト運用を行います。顧客の視点で商品選びから決済まで一連の流れを確認し、バックエンド側は受注処理から発送までを行います。小規模ECサイトで運用も少人数であれば、購入から発送まで完了できれば問題ありません。中規模以上のECサイトでは運用に関わる人数も多くなるため、スタッフのトレーニングが必要です。管理画面の使い方やトラブル時の対応について、いつでも立ち戻れるようにマニュアルも用意しておきましょう。

自社ECの成功ポイント4選

自社ECの成功ポイント4選

自社ECを成功させる、以下4つのポイントをお伝えします。

  • 自社ECに適したカートシステムを選ぶ
  • 顧客とのコミュニケーションを大事にする
  • 顧客視点に立ったページ設計を行う
  • 広告の効果測定を行い適切な広告展開をする

具体的な内容について見ていきましょう。

自社ECに適したカートシステムを選ぶ

自社ECを成功させるには、最適なカートシステムの選定が必須です。カートシステムはどれも同じと思っている方もいらっしゃいますが、実はカートシステム提供会社によってかなり個性があります。

カートシステムの詳しい選び方については別記事「ecカートを目的別で14社徹底比較!基本機能や種類やポイントも紹介」で紹介しているので、ここでは重要なポイントに絞ってお伝えします。

もっとも大事なことは、自社ECの規模に合っているかということです。自社ECの売上は、カート機能に左右されると言っても過言ではありません。例えば、無料のECカートの場合、想定されているのは小規模ECサイトであるため、多数のアクセスが集中するとサイトが表示できなくなる可能性があります。売上アップのために販促を強化しても、ECカートが対応できないのでは販促の効果が十分に得られません。

また、新規に自社ECを始める際は、ECカートについてしっかりとしたサポートが得られるかも重要です。機能に関するサポートだけでなく、EC運営のアドバイスを求められるかも合わせて確認しましょう。

ECカートは移設するにも費用や時間がかかるため、目標とする売上規模に対応できるカートシステムを最初から使用するのがおすすめです。

顧客とのコミュニケーションを大事にする

自社EC成功の秘訣は、顧客とのコミュニケーションにもあります。顧客と自由にさまざまなかたちでコミュニケーションをとれるのが、自社ECの魅力の1つです。顧客の購入履歴に合わせて同梱物の内容を変えたり、SNSを通じて情報を発信したり、会員限定のイベントを開催したりと、コミュニケーションをとることで顧客をファンに変えていけます。

もし顧客とのコミュニケーションを重要視しないのであれば、自社ECではなくECモールを検討した方がいいかも知れません。せっかく自社ECを始めるのであれば、より多くのファンがつく店舗にしていきましょう。

顧客視点に立ったページ設計を行う

自社ECを構築する際に気を付けたいのは、ECサイトのページ設計とデザインです。他社と差別化するためにECサイトのデザインにこだわるのはいいことですが、そこには使いやすさや見やすさが抜けてはいけません。例えば、画像を配置し過ぎてサイトがなかなか表示されないとか、背景色と文字色の相性が悪く読みづらいなど、少しでも使いにくさがあると顧客は他店に流れてしまいます。

ECサイトはあくまでも買い物をする場所だということを念頭に、お客さまの視点に立って楽しく心地よく買い物ができるデザインを考えましょう。

広告の効果測定を行い適切な広告展開をする

自社ECでは広告が重要になります。まだ知名度がない段階で売上を立てるには、広告によって集客を行うしかありません。とはいえ、自社の強みや評価されるポイントなどは最初はわからないでしょう。オープン初期では、商品を押し出すポイントを複数考えて、広告展開を行い、その効果測定を蓄積することが大切です。広告によるデータが蓄積されていけば、どこにどういった広告を展開するのが効果的か数字で分かるようになります。

オンラインの広告だけでなく、折込チラシなどのオフラインの広告も検討している場合は、オフライン広告のデータ解析ができるECカートかどうかも、カート選定時に注目しましょう。

自社ECサイトでの成功事例3選

自社ECサイトでの成功事例3選

  • 最北の海鮮市場
  • ベイクルーズ
  • 中川政七商店

いずれもECモールから、自社EC中心に転換して成功している企業です。ECモールから撤退した理由なども参考にしてください。

ECモール売上高70%から自社ECのみに「最北の海鮮市場」

「最北の海鮮市場」は1999年にモールを中心にEC展開を開始し、2013年に全てのECモールから撤退して自社ECのみとなりました。自社ECのみにするまで4年の歳月をかけて準備を行ったそうです。

ECモールでの運営では、いつしかモール内のランキングロジックやアルゴリズムに合わせた商品開発を行うようになり、商売の本質を見失っていると感じたためECモールからの撤退を決めました。ECモールからの完全撤退前の2010年ころでは、売上の7割がECモールであったといいます。

2014年以降自社ECの売上は1.7倍となり、成長を続けている同社が取り組んでいることは、自社メディアやメルマガ、YouTubeによって情報をエンタメ化させることです。北海道の食品を販売する同社では、農作物の成長過程や畑の様子を顧客に向けて情報発信しています。予約商品を購入した顧客も、生育過程を伝えることで待つことが楽しくなるようにという想いから始めたそうです。

その他、ボリュームゾーンである40〜50代の方がスマホで使いやすいよう、あえて機能をそぎ落としたサイトデザインにするなど、徹底した接客を心がけています。

ECモール依存から脱却「ベイクルーズ」

ECモール依存から脱却「ベイクルーズ」

参照元:BAYCREW’S store

2020年8月期にEC売上高が500億を突破し、自社EC売上が約8割を超えた「ベイクルーズ」。アパレル大手の中でも、自社ECでの成功は抜きんでています。脱ECモールの動きは2014年ころから開始し、それまで契約していた10以上のアパレルECを4つに絞り、楽天市場やAmazonからは完全に撤退しました。

同社では、ECモール主体から自社ECに転換した理由を、ECモールの運営方針変更などによるリスクを回避するためとします。例えば、検索エンジンのアルゴリズム変更への対応でいうと、自社ECではすぐに対応できても、ECモールではモール側に依存しなければなりません。また、販促面で自社で扱えるデータに限りがある点も、脱モールを決めたきっかけになったそうです。

自社ECにおいては、オムニチャネル化を重視しています。ECと実店舗の垣根を無くし、「どこかで」購入してもらえばいいという運営方針です。また、自社ECと店舗の役割の違いも意識しています。ブランドの世界観を体験してもらうのは実店舗であり、自社ECではあえて世界観には踏み込まず、使いやすさを追及してECサイトを設計しているそうです。こうした施策も、自社ECと店舗のデータを統合しているからできることでしょう。

長期的な視点に立ち自社ECのみに転換「中川政七商店」

長期的な視点に立ち自社ECのみに転換「中川政七商店」

参照元:中川政七商店

「中川政七商店」は2018年に楽天市場から撤退し、自社ECに力を注いでいます。EC全体の4割に及んでいたという楽天市場の売上を、撤退から1年余りで自社ECサイトがカバーできるまでになりました。

同社がECモールの撤退を決めた理由の1つは、店舗側が行える表現の幅が制限されることにあります。プログラミング言語1つでも、自社ECであれば自由に何でも使用できますが、ECモールではモール側の仕様によって限られてしまいます。

また、ECモールではブランド側が望むような購買体験が難しいという点も、撤退の要因としてあったそうです。物は売れても、体験が良くなければお客さまは再訪してくれない。そうした危機感から、長期的な視点に立って自社ECの強化に踏み切りました。

同社の自社ECでは、顧客の購入体験にこだわっています。具体的にはコンテンツ内容と表示デザインです。デザイン面では、スマホ利用が多いことを考慮して、スマホで見やすいデザインとしました。スマホユーザーの多くは、ブラウザーを使っている時間よりもアプリを使っている時間が長いというデータを基に、まるでアプリを見ているような感覚で使えるサイトデザインを採用しています。

コンテンツの面では、量や内容を充実させた結果、ページビュー数が150%に伸び、1人が見るページ数も増加。一般的にECでは、顧客の滞在時間やページ閲覧数は売上に結び付く重要な要素ですので、こうしたコンテンツやデザインの工夫が同社のEC売上を成長させた要因であると言えるでしょう。

中長期的な目線で自社ECは構築すべき

中長期的な目線で自社ECは構築すべき

自社ECとECモールのメリットデメリットの比較や、自社ECを始める手順、自社ECを成功させるポイントについて解説しました。ECモールは始めやすく集客しやすいというメリットがある一方、モールの方針変更によって店舗運営が左右されたり、他店との価格競争に巻き込まれたりする懸念があります。

他社と差別化できる商品やサービスがあれば、ECモールに頼らずに、自社ECを伸ばしていく方法もおすすめです。自社ECはコンセプトに沿った自由な運営ができますし、顧客とのコミュニケーションを大切にすることで、顧客をファンに育成することもできます。

しかし、自社ECは集客が大変です。店舗の認知力が低ければ、なかなか顧客は訪れてくれません。そのため、特に初期においては広告の活用が重要です。広告展開にはさまざまなノウハウが必要ですので、信頼できる外部パートナーを選ぶのもいいでしょう。

パッケージ型ECカートシステムの「通販マーケッターEight!」は、東通メディアが開発したECカートです。東通メディアは、通販業界に強い広告代理店でもあります。「通販マーケッターEight!」は、業界最多水準の機能数や、直感的な操作性、柔軟なカスタマイズ性がEC事業者に支持されており、これまで多くの自社ECで採用されてきました。自社ECに欠かせない広告運用や広告データ収集にも強いため、これから自社ECを始める企業にもおすすめです。

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