近年、ECサイトによるビジネスモデルは業種を問わず広がりを見せつつあります。デジタル時代のビジネスにおいて、インターネットを通じて商品やサービスを売買するためにECシステムは不可欠な存在となっています。
しかし、ECシステムについて以下のような疑問を感じているケースも多いです。
「ECシステムでどんなことができるか知りたい」
「どのECシステムを利用すればいいか分からない」
「ECシステムの導入を検討しているが比較ポイントが分からない」
この記事ではECシステムでできること、ECシステムの選び方・比較ポイントなどを中心に紹介します。
ECシステムとは?
ECシステム(Electronic Commerce System)とは、インターネットを利用して商品やサービスを売買するためのシステムです。
オンラインショッピングサイトや電子市場など、消費者がインターネットを通じて直接商品を購入できるプラットフォームを提供します。
小売業者、卸売業者、製造業者など、様々なビジネスモデルで利用されており、消費者にとっても便利で効率的なショッピング体験が可能です。
また、グローバル市場へのアクセスや24時間365日の営業が可能というメリットもあります。
ECシステムを構成する主な機能(ECシステムでできること)
ECシステムごとに備わっている機能は異なりますが、一般的には以下の機能が備わっています。
- ECサイト作成
- オンライン決済
- 商品管理
- 顧客管理
- 集客および販売促進
- データ分析
ECサイト作成
ECサイト作成機能は、オンラインストアの基盤を構築するための重要な要素です。
この機能を使うことで、自社に専門的なプログラミング知識・ノウハウがなくても、直感的なインターフェースを通じて自分のECサイトをデザインし、カスタマイズできます。
テンプレートを利用してサイトのレイアウトを選び、商品カテゴリやブランドイメージに合わせて色やフォントを調整することが可能です。
また、ドラッグアンドドロップの操作で、画像やテキスト、動画などのコンテンツを簡単に追加し、サイトの見た目と機能性を向上させることができます。
オンライン決済
オンライン決済機能はECシステムの中核をなす部分で、顧客が商品やサービスの支払いを安全かつ迅速に行えるようにする機能です。
この機能では、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、銀行振込、代金引換、さらにはPayPalやApple Payなどのモバイル決済オプションを含む多様な支払い方法をサポートします。
多種多様な支払い方法を用意することで、いわゆる「カゴ落ち」を防ぐことにも役立つでしょう。
また、オンライン決済にはセキュリティも重要な要素で、ECサイトは顧客の金融情報を保護するために、最新の暗号化技術とセキュリティプロトコルを採用しています。これにより、顧客は安心してショッピングを楽しむことができます。
商品管理
商品管理機能は、ECサイト上で取り扱う商品の情報を一元管理するためのツールです。
この機能を利用することで、商品の追加、編集、削除が容易になります。
商品の詳細情報、価格設定、在庫数なども管理でき、カテゴリ分けやタグ付けをすることで管理の効率化を図ることも可能です。
また、商品のバリエーション(サイズ、色、素材など)の管理や、プロモーションや割引の設定も行えます。
効率的な商品管理は、在庫の過不足を防ぎ、顧客満足度を高めるために不可欠です。
顧客管理
顧客管理機能は、購入した顧客情報を安全に管理する以外にも、顧客データを収集し、分析するための重要なツールです。
この機能を使うことで、購入履歴や行動パターン、好みなどのデータを基にパーソナライズされたマーケティング戦略を展開できます。
例えば、顧客の過去の購入履歴に基づいて関連商品を推薦したり、特別な割引やプロモーションを提供したりすることが可能です。
また、顧客のフィードバックや問い合わせ一覧を管理し、より良い顧客サービスを提供するためのデータや情報を得ることもできます。
集客および販売促進
集客および販売促進機能は、ECサイトのトラフィック(訪問者数)を増やし、売上を向上させるために重要です。SEO最適化ツールを使用して、検索エンジンでのサイトの可視性を高めることができます。
また、SNSやホームページとの連携、メールマーケティング、アフィリエイトプログラムなどを通じて、潜在顧客にリーチし、ブランド認知度を高めることが可能です。
クーポンやポイントの付与、会員ランク別の割引などを実施し、顧客の購入意欲を刺激することもできます。
データ分析
データ分析機能は、ECサイトのパフォーマンスを評価し、改善点を特定するために不可欠です。
この機能を使うことで、サイトのPV数、売上データ、コンバージョン率、顧客の購入パターンなどを詳細に分析できます。
これにより、マーケティング戦略の効果を測定し、ターゲット顧客に合わせた商品やサービスの改善、在庫管理の最適化、価格戦略の調整、商品の改善・開発など、ビジネスの意思決定をデータに基づいて行うことが可能になります。
ECサイトの構築・運用ができるシステムの種類
ECサイトを構築・運用できるシステムは、主に以下の種類があります。
- ASPカート型
- オープンソース型
- パッケージ型
- スクラッチ型
ASPカート型
ASPカート型ECシステムは、ECサイト構築のためのクラウドベースのサービスです。
このシステムでは、ユーザーがサーバーやソフトウェアを準備する必要がなく、ECサイトを迅速に立ち上げて運用することができます。
ASPカート型は、通常、月額料金制で提供され、基本的なEC機能(商品展示、カート、決済システムなど)が含まれています。
ユーザーフレンドリーなインターフェースと、カスタマイズ可能なデザインテンプレートを提供することで、特に中小企業やスタートアップ企業などに人気があります。
しかし、カスタマイズの自由度や独自機能の追加には限界があるため、大規模なECサイトや特殊な要件を持つビジネスには不向きな場合があります。
オープンソース型
オープンソース型ECシステムは、ソースコードが公開されており、誰でも自由に利用、改変、配布できるシステムです。オープンソース型の最大の利点としては、高いカスタマイズ性と柔軟性が挙げられます。
開発者はソースコードを自由に編集できるため、独自の機能やデザインをECサイトに組み込むことが可能です。
また、コミュニティのサポートが充実しており、多くのプラグインや拡張機能が利用できます。
しかし、オープンソース型システムは、技術的な知識が必要であり、セキュリティやアップデートの管理も自己責任となるため、運用には専門的なスキルが求められます。
パッケージ型
パッケージ型ECシステムは、ECサイト構築に必要な機能一式をパッケージ化したソフトウェアです。
このシステムは、商品管理、顧客管理、注文処理などのECに必要な機能が搭載されており、比較的簡単にセットアップできるのが特徴です。
中規模から大規模のECサイトに適しており、安定した運用とプロフェッショナルなサポートを提供します。
パッケージ型システムは、カスタマイズの自由度が高く、ビジネスの成長に合わせて拡張が可能ですが、自社サーバーが必要である点やASP型に比べて初期投資や維持費用がかかる点には注意しておきましょう。
スクラッチ型
スクラッチ型(フルスクラッチ)ECシステムは、ゼロから完全にカスタマイズされたECサイトを構築する方法です。
フルスクラッチ型では、企業の独自の要件や特定のニーズに完全に合わせたECサイトを作成できるため、最も柔軟性が高いと言えます。
大規模な企業や特殊なビジネスモデルを持つ企業に適しており、独自のブランドイメージや顧客体験を提供することが可能です。
しかし、ゼロの状態から作り上げるため、開発には専門的な技術力と時間が必要であり、コストも高くなります。また、保守やアップデートも全て自己管理する必要があります。
ECシステムを比較するときのポイント
ECシステムには様々な種類がありますが、複数システムを比較する際は以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 自社の事業規模に対応できるか
- 外部チャネルと連携できるか
- 決済機能の種類が多いか
- 販売促進機能が充実しているか
自社の事業規模に対応できるか
ECシステムを選ぶ際、自社の事業規模に適したシステムを選ぶことが重要です。
年商1億円に満たない小規模な会社やスタートアップ時には、低コストで簡単に設定できるASPカート型が適しています。
年商が1億円以上になる中規模から大規模のビジネスでは、カスタマイズ性や拡張性が高いオープンソース型やパッケージ型が適切です。
大企業や特殊なニーズを持つビジネスには、フルスクラッチ型が最適です。事業の成長に合わせてシステムをアップグレードできるかどうかも考慮する必要があります。
一般的に、事業規模が大きくなるにつれ、サイトのアクセス対応限度、受発注処理の効率化、売上を上げるための機能が必要になってくるため、年商1億円以上を目指すのであればASP型はおすすめできません。
外部チャネルと連携できるか
ECシステムを選ぶ際には、外部チャネルとの連携機能も重要なポイントです。
SNS、マーケットプレイス、他のECプラットフォームとの連携が可能かどうかを確認しましょう。
これにより、より広範な顧客層にリーチし、販売チャネルを多様化することができます。
また、外部チャネルとのデータ連携により、顧客行動の分析や在庫管理の効率化も期待できます。自社の主となる集客チャネルと連携できるかはとくに重要です。
決済機能の種類が多いか
ECシステムの決済機能は、顧客の利便性に直結します。
クレジットカード、デビットカード、電子マネー、銀行振込、代金引換、PayPalなど、多様な決済方法に対応しているかを確認することが重要です。
決済オプションが多いほど、顧客の選択肢が広がり、購入のハードルが低くなります。また、国際的な決済方法に対応しているかも、グローバルな市場を目指す場合には重要です。
また、初回購入時に「後払い決済」が利用できるとCVRが高くなる傾向があり、継続して購入してもらう定期購入の場合は「クレジットカード決済」だと継続率が高くなる傾向があるため、上記2つは用意しておくことをおすすめします。
販売促進機能が充実しているか
ECシステムにおける販売促進機能の充実度は、マーケティング戦略の実行に直結します。
Web広告との連携機能、メールマーケティング、クーポン、ポイント、アフィリエイトプログラム、SNS連携機能などが含まれているかを確認しましょう。
新規購入数増加のために、「お試し(トライアル販売)機能」「SNS連携」「2クリック決済」「かご落ち通知」「アフィリエイト連携」などの機能があればより多くの新規購入数を増やすことができます。
また、2回目以降の購入数増加には、「アップセル/クロスセル」「会員ランク機能」「ポイント機能」などがあれば良いでしょう。これらの機能を活用することで、顧客エンゲージメントを高め、リピート購入や新規顧客獲得を促進することができます。
管理画面は使いやすいか
ECシステムの管理画面の使いやすさは、日々の運用効率に大きく影響します。
直感的で理解しやすいインターフェース、簡単なナビゲーション、商品や注文の管理がスムーズに行えるかどうかを確認することが重要です。
例えば、商品の一括登録・編集・削除や、デザインのノーコード編集ができれば業務の効率化も図れます。
また、多言語対応やカスタマイズ可能なダッシュボードなども、運用のしやすさを左右する要素です。可能であれば、実際にデモ版を試してみることをおすすめします。
目的別ECシステムの選び方
実際にECシステムを選ぶ際は、ECサイトの運用目的を明確にしておくことが大事です。
ここでは、よく挙げられる以下の目的に応じたECシステムの選び方を紹介します。
- 将来的にサイトの規模を拡大したい
- 手軽にECサイトを始めてみたい
- 自社でシステム構築・運用したい
- 大規模なサイトを構築・運用したい
将来的にサイトの規模を拡大したい
将来的にサイトの規模を拡大することを考えている場合、拡張性と柔軟性が高いECシステムを選ぶことが重要です。
オープンソース型や一部のパッケージ型システムは、カスタマイズが容易で、追加の機能やサービスを組み込むこともできます。
また、クラウドベースのシステムは、サーバーの拡張やリソースの追加が容易で、トラフィックの増加に対応しやすいです。
一方でASP型ECカートシステムの場合は事業成長に合わせて独自機能を追加することはできません。
拡張性の高いシステムを選ぶことで、ビジネスの成長に合わせてECサイトをスムーズに拡大できます。
将来的に年商1億円以上の事業規模を目標としているが、サイト構築コストや工数を抑えたい場合にはパッケージ型がおすすめです。
手軽にECサイトを始めてみたい
手軽にECサイトを始めたい場合、ショッピングカートASP型のシステムが最適です。ASP型のシステムは、初期設定が簡単で、専門的な技術知識がなくても利用できます。
多くのASPサービスは、直感的なインターフェース、豊富なデザインテンプレート、基本的なEC機能を提供し、迅速にオンラインストアを立ち上げることが可能です。
低コストで始められるため、初心者や小規模ビジネスに特に適しています。
自社でシステム構築・運用したい
自社でシステムの構築と運用を行いたい場合、オープンソース型のECシステムが適しています。
オープンソースシステムは、ソースコードが公開されており、自由にカスタマイズできるため、独自のニーズに合わせたECサイトを構築することができます。
ただし、このタイプのシステムは技術的な知識が必要であり、セキュリティやメンテナンスも自社で管理する必要があります。
自社でECサイトを構築したいが制作コストを抑えたいときはオープンソース型がおすすめです。
大規模なサイトを構築・運用したい
大規模なECサイトを構築・運用する場合、高度なカスタマイズ性と強力な機能を備えたパッケージ型またはフルスクラッチ型のシステムが適しています。
フルスクラッチ型のシステムでは、大量の商品データの管理、複雑な顧客管理、高度なセキュリティ要件など、大規模な運用に必要な要件を満たすことができます。
フルスクラッチ型では、完全にカスタマイズされたユニークなECサイトを構築できますが、高い技術力と予算が必要です。
まとめ:自社の運用目的・目標に合わせたシステムを選ぶ
ECシステムの選択は、自社の事業規模、目標、予算、技術力に基づいて慎重に行う必要があります。
適切なシステムを選ぶことで、効率的な運用と成長を実現できるからです。
そのためには、自社が将来的に目指す事業規模を明確にし、予算や時間や人材を含めた開発・運用にかけられるリソースを明確にしておくと良いでしょう。
自社にECシステムの知見がない場合、まずはEC構築の専門家に相談するのがおすすめです。
15年以上のECノウハウを蓄積して開発された「通販マーケッターEight!」は、様々な業界業種に対応できるEC構築パッケージソフトです。
ECに関するノウハウも豊富のため、ECシステムに関して情報収集している方は、まずは一度ご相談してみてください。