自社ECサイトの運営規模が大きくなり、作業量が増加して人的ミスが増えてきたら、基幹システムとの連携を考慮する必要があります。
しかし、基幹システムとECサイトの連携には、専門的な知識や技術が必要となるため、なかなか踏み出せないケースも多いです。
そこで本記事では、基幹システムとECサイトとの連携が望ましいケース、連携方法、連携する際の注意点などを解説します。
通販の基幹システムとは
通販基幹システムとは、通販事業における様々な業務、顧客データなどを、一括管理するための統合システムです。
このシステムにより、顧客管理、受注管理、入金管理、出荷管理、在庫・棚卸管理など、通販事業で重要となる業務が効率的に行えるようになります。
例えば、顧客データを一元管理すれば、マーケティング施策の精度を向上させられ、結果として顧客満足度を高めることが可能です。また、リアルタイムで在庫情報の更新ができるようになれば、在庫過多や在庫切れのリスクを減らせます 。
通販事業にも基幹システムを導入することで、業務プロセスの標準化と効率化が進み、情報の正確性と統制性も確保されるでしょう。
基幹システムとERPの違い
基幹システムと似たようなものに、統合基幹業務システム(ERP)があります。
どちらのシステムも、企業の業務を効率化するために重要なものですが、それぞれ役割とカバーする範囲が異なります。
一般的な基幹システムは、特定の業務領域(例えば財務、生産、在庫管理など)ごとに個別に存在し、その部門の業務を支援します。異なる部署とデータのやり取りをするには、システム間の連携が必要です。
一方、ERPは、複数の業務領域を統合し、企業全体の情報を一元管理して業務の効率化・最適化を図るためのシステムです。
どちらのシステムを選ぶかは、企業の規模や業務の特性、経営戦略に基づいて検討することが重要です。
基幹システムとECサイトの連携が望ましいケース6選
通販基幹システムとECサイトでは、機能や役割が異なります。ECサイトを運用していく上で、以下のようなケースでは基幹システムとの連携が望ましいです。
- 取り扱う商品の種類が多い
- リアルタイムで在庫管理をしたい
- 受発注の量や頻度が大きい
- 顧客データを統合して分析したい
- キャンペーンやプロモーションを頻繁に行いたい
- 受注処理に伴う業務を効率化したい
こういったケースでは、基幹システムとECサイトを連携することで、通販ビジネスの成長と競争力の向上につながります。
取り扱う商品の種類が多い
取り扱う商品の種類が多い場合、すべての商品情報を登録し、さらに更新を続けていく作業はとても大変です。さらに、商品の数が増えるごとに更新作業の手間も比例して増加していくため、手作業での対応が難しくなります。
また、終売品の情報がサイト上に残っていたり、価格や商品情報の入力内容に誤りがあると、顧客とのトラブルに発展するリスクがあります。
そこで、基幹システムとECサイトを連携させることで、商品情報の一括管理が可能となり、効率よく運用ができるでしょう。具体的には、基幹システムに商品情報を一元的に登録することで、情報の更新が自動化され、手作業によるミスを防止できます。
リアルタイムで在庫管理をしたい
実店舗とECサイトで在庫を共有している場合や、複数のECサイトで商品を販売している場合、在庫情報の正確さが求められます。在庫数がリアルタイムで更新されないと、欠品トラブルが発生しやすくなり、再購入の手間を嫌ってキャンセルされるリスクも高まります。
そのため、基幹システムとECサイトを連携させることで、在庫情報をリアルタイムで管理しつつ、常に最新の在庫状況を反映させることが可能です。
これにより、顧客は正確な在庫情報を確認しながら買い物をすることができるため、欠品によるクレームを防ぐことができます。また、在庫が少なくなった際には自動的にアラートを出す機能を活用することで、迅速に補充作業を行うことができます。
発注量や発注頻度が高い
取り扱う商品の受発注の量が多く、さらに受発注の頻度が高い場合、基幹システムとECサイトの連携は不可欠です。
受注処理の量や頻度、仕入れ先への発注業務などが増えると、手作業による処理ではミスが発生しやすくなります。特に少人数で運営している場合、処理する量が多くなると対応が難しくなり、結果としてヒューマンエラーが続発します。
そのため、基幹システムとECサイトと連携させることで、手作業によるデータ入力の手間が省けるだけでなく、データの正確性が向上し、ミスの発生を防ぐことが可能です。
顧客データを統合して分析したい
基幹システムとECサイトを連携させることで、顧客データを統合した上での総合的な分析も可能です。
また、顧客の購買履歴や行動パターンを一元的に把握することで、より精度の高いマーケティング戦略を立案できるようになります。例えば、購入頻度の高い商品や、特定の時期に購入が集中する商品などを把握することで、適切なタイミングでプロモーションを展開することが可能です。
さらに、リアルタイムでの情報更新は、最新のデータをもとにした迅速な意思決定には欠かせません。顧客データが常に最新の状態に保たれていることで、ターゲットセグメントの選定や、個々の顧客に対するパーソナライズドな提案が可能となるでしょう。
キャンペーンやプロモーションを頻繁に行いたい
キャンペーンやプロモーションを頻繁に実施していきたいのであれば、基幹システムとECサイトの連携は不可欠です。
キャンペーンやプロモーションをするときは、急激な注文増加にも対応できるよう在庫情報をリアルタイムで把握しなければなりません。
そのため、頻繁に変わる在庫状況や価格情報について、リアルタイムでのデータ更新が必要です。
その結果、常に最新に更新された情報をもとにユーザーは購入判断ができるため、販売機会を逃してしまうリスクを減らせるでしょう。
仕入れ・出荷に伴う業務を効率化したい
ECサイトの受注処理は、業務の幅が広く作業の種類も多いため、基幹システムとECサイトを連携することで業務の効率化を図れます。
特に、受注から発送までの業務フローが複雑な場合、手作業によるミスが多かったり、スタッフの負担が大きかったりするため、できるだけ早期に連携をすると良いでしょう。
また、基幹システムとECサイトを連携することで、在庫状況を常に把握できるようになり、適切なタイミングでの発注が可能となりコスト削減にも繋がります。
基幹システムとECサイトを連携する3つのメリット
基幹システムとECサイトを連携することで、多くのメリットを得られます。ここでは、特に重要な以下3つのメリットを紹介します。
- 業務を効率化できる
- 市場での競争力を高められる
- ヒューマンエラーを削減できる
これらのメリットは、通販事業を拡大していくためにも重要なポイントです。
業務を効率化できる
基幹システムとECサイトを連携させることで、業務効率の大幅な向上が期待できます。
これまで手入力で行っていた商品情報や在庫情報、受注情報などを自動で取り込むことが可能になるため、手作業でのデータ入力、データの確認作業などの業務を大きく減らすことができます。
また、基幹システムとECサイトを連携することで、在庫管理や受注処理がリアルタイムで行われるようになります。
例えば、ECサイトで注文が入ると同時に在庫情報が更新され、基幹システム上で自動的に在庫が引き落とされます。これにより、在庫切れや過剰在庫のリスクを減らすことができ、在庫管理に関する業務効率が大幅に向上します。
さらに、受注情報が基幹システムへ自動的に反映されるため、受注処理のスピードが上がります。手動で行っていたデータの転記や確認作業が不要となり、注文から出荷までの時間も短縮できるでしょう。
市場での競争力を高められる
基幹システムとECサイトを連携させることで、詳細な顧客情報や商品購買データの分析が容易になります。
基幹システムに集約されたデータを活用すれば、顧客の購買パターンや行動履歴を精緻に把握することができ、マーケティング戦略を効果的・効率的に立案できます。
また、データを活用することで、顧客の細分化が可能となり、パーソナライズされたサービスを提供することも可能です。例えば、特定の顧客層に向けた特別なキャンペーンやプロモーションを実施することで、顧客満足度を向上させ、リピーターを増やすことができます。
このように、大量のデータを活用したマーケティングを展開することで、他社サイトとの差別化を図ることができ、市場での競争力をより強化できるでしょう。
ヒューマンエラーを削減できる
手作業によるデータ入力やデータ管理は、どうしてもミスが発生してしまいがちです。しかし、基幹システムとECサイトを連携することで、これらの作業を自動化し、入力ミスや計算ミスを大幅に減少させることができます。
商品情報や在庫情報、受注情報などが正確であれば、サイト自体の信頼性も向上し、顧客からも信頼されるでしょう。
また、ヒューマンエラーが原因で発生するクレームへの対応時間も削減できます。例えば、注文ミスや出荷ミスがなくなることで、顧客からの問い合わせ対応にかかる時間が減り、スタッフは他の重要な業務に集中できるようになります。
基幹システムとECサイトを連携する3つの方法
基幹システムとECサイトを連携させる具体的な方法として、以下の3つが挙げられます。
- API連携
- ファイル連携
- データベース連携
それぞれの連携方法に特徴があるため、自社の業務形態やニーズに最適な方法を選ぶことが重要です。
API連携
API連携は、基幹システムとECサイト間でリアルタイムにデータをやり取りするための効果的な方法です。
API(Application Programming Interface)を使用することで、在庫情報や受注情報の更新が即時に反映されるため、タイムラグがありません。これにより、顧客は常に最新の在庫状況を確認でき、在庫切れや重複注文のリスクを減らすことができます。
また、API連携はセキュリティ面でも優れています。データのやり取りがリアルタイムで行われるため、不正アクセスやデータ漏洩のリスクが低いです。さらに、暗号化通信を用いることで、データの安全性が一層強化されます。
しかし、API連携には高額な開発費用がかかる傾向があります。特に、既存の基幹システムと新しいECサイトを統合する場合、カスタマイズやシステム間の調整が必要となり、その分コストが増加するでしょう。
ファイル連携
ファイル連携は、基幹システムとECサイト間で一度に大量のデータを連携させる方法です。
CSVやExcelなどのファイル形式を用いて、定期的にデータをアップロードまたはダウンロードすることで、システム間のデータ同期を実現します。この方法は、比較的簡単で導入コストが低いため、多くの企業で採用されています。
ファイル連携の大きな利点は、システム間の相互運用性の高さです。既存のシステムに大きな変更を加える必要がなく、既存のインフラを活用して連携を実現できるため、初期費用を抑えることができます。
また、一度に大量のデータを連携できるため、商品情報や在庫情報など、多くのデータを一括して処理する場合に適しています。
しかし、ファイル連携にはリアルタイムでのデータ更新ができないというデメリットがあります。そのため、在庫状況や受注情報など、リアルタイム性が求められるデータには適していません。
データベース連携
データベース連携は、基幹システムとECサイト間で直接データベースを共有し、情報をリアルタイムでやり取りする方法です。
この連携方法の最大の利点は、データベースにアクセスすれば、基本的にすべての情報を取得できることです。これにより、在庫情報や受注情報、顧客データなどをリアルタイムで反映できます。
しかし、データベース連携には事前に考慮すべきセキュリティ上の課題も存在します。ECサイト側のセキュリティポリシーによっては、データベースへのアクセスが制限されることがあるからです。
そのため、事前にアクセス許可の確認やセキュリティ対策を講じることが重要になります。
基幹システムとECサイトを連携する際の5つの注意点
基幹システムとECサイトをシームレスに連携させるために、以下5つの注意点を把握しておきましょう。
- 連携するデータの範囲と量
- 連携するタイミング
- 連携方法の決定
- セキュリティ対策
- トラブル対応の準備
これらの注意点について、ここから解説します。
連携するデータの範囲と量
基幹システムとECサイトを連携する際には、連携するデータの「範囲」と「量」を、慎重に検討する必要があります。
まず、商品データ、顧客データ、注文情報などから、連携させたい情報を洗い出します。
- 商品データ:商品名、価格、在庫数、説明文など
- 顧客データ:氏名、住所、連絡先、購入履歴など
- 注文情報:注文番号、取引日、取引金額、支払い方法など
データの範囲を適切に設定しないと、業務効率の低下やセキュリティリスクが発生する可能性があります。不要なデータまで連携してしまうと、データ処理に時間がかかり、業務全体の効率が低下します。さらに、重要なデータが外部に漏れるリスクも増大するでしょう。
そのため、連携するデータは最小限に抑え、必要なデータのみを選定することが重要です。
次に、1回で送信するデータの容量や件数、送信頻度を決めましょう。
大量のデータを一度に送信するとシステムに負荷がかかり、業務に支障をきたす可能性があります。リアルタイムでの在庫更新が必要な場合は頻繁にデータを送信し、定期的な報告書作成用のデータは日次や週次での送信にするなどの工夫が必要です。
連携するタイミング
データを連携するタイミングも、基幹システムとECサイトを連携する時の重要なポイントです。
最適なタイミングを設定することで、システムの負荷を軽減し、正確でスムーズな情報共有が可能となります。例えば、リアルタイムでのデータ更新と、定期的なバッチ処理でのデータ更新では、最適なタイミングが異なります。
全データを定期的に取り込むバッチ処理は、大量のデータを一括して処理するため、システム負荷が低い夜間帯にデータを更新することで、業務時間中のシステムパフォーマンスを維持できます。
連携するタイミングを決めるにあたっては、連携の目的と業務の特性を踏まえつつ、慎重に検討しましょう。
連携方法の決定
先ほど紹介した連携方法(API連携、ファイル連携、データベース連携)の中から、自社にとって最適な方法を選択します。
そのために、まずは自社の業務プロセスや問題点を詳細に分析しましょう。その上で、連携する目的、対象にする業務などを明確にしてから、連携方法の検討に入ります。
また、システムの将来的な拡張性も考慮しておくことも重要です。例えば、今後の事業拡大を見据えて、柔軟に対応できるAPI連携を選択するといった判断も必要となります。
セキュリティ対策
基幹システムとECサイトを連携させるには、セキュリティ対策が欠かせません。漏洩や不正アクセスを防ぐために、強固なセキュリティ対策を講じる必要があります。
まず、安全なファイル連携方式を設計することが基本です。データのやり取りを行う際には、暗号化プロトコル(例:SSL/TLS)を使用し、データの盗聴や改ざんを防ぐことが求められます。
さらに、ウイルス対策ソフトの導入や定期的なシステムスキャンを行い、マルウェアやウイルスからシステムを保護することも不可欠です。これにより、不正プログラムの侵入を防ぎ、データの安全性を確保します。
また、データベースへのアクセス権限を適切に管理し、必要最低限のユーザーにのみアクセスを許可することで、不正アクセスのリスクを低減することができます。
アナログ的な方法ですが、情報セキュリティ研修の実施もセキュリティ対策には効果的です。社員に対して定期的にセキュリティ意識を高めるための研修を行い、フィッシング詐欺やソーシャルエンジニアリングなど、最新のセキュリティ脅威に対する情報を伝えましょう。
そうすることで、内部からのセキュリティリスクも軽減することができます。
トラブル対応の準備
基幹システムとECサイトを連携する時のトラブル発生を想定して、トラブルへの対応方法などを、事前に準備しておくことが重要です。
不具合が発生した場合に備えて、責任の所在や範囲、報告先を明確にしておきましょう。具体的には、各部署や担当者の役割を明確にしておき、トラブルが発生した際に迅速に対応できる体制を整えておきます。
また、システムが停止した場合の業務継続計画(BCP)も、事前に策定しておくことが重要です。例えば、バックアップシステムの導入や、手動での業務継続方法を準備しておくことで、システム停止時でも業務を止めずに対応できます。システムの復旧手順を明確にし、従業員全員がその手順を理解していることも大切です。
障害が発生した際に「原因の切り分け」が迅速に行える体制を構築しておくことも不可欠です。障害対応マニュアルを作成し、誰がどのように対応するかを明確にしておくことで、スムーズな対応が可能となります。
さらに、システムトラブルに対する問い合わせへの対応体制の整備もしておきましょう。
顧客からの問い合わせやトラブル報告に対して迅速かつ適切に対応するための窓口を設置し、専任のスタッフを配置します。また、FAQの充実や、チャットボットの導入など、顧客が自己解決できる環境を整えることも有効です。
まとめ ECサイトの利益向上に基幹システムとの連携は欠かせない
ECサイトの利益アップには、基幹システムとの連携が欠かせません。
基幹システムとECサイトを連携することで、経営資源をより効果的に活用することができます。
また、業務を効率化することができ、人件費などのコストを大幅にカットすることも可能です。
また、顧客の購買履歴や行動パターンを詳細に分析し、ターゲット層に合わせたプロモーションやキャンペーンを展開するなど、データに基づいたマーケティング戦略を打ち出すことができます。その結果、顧客満足度の向上、リピート率の増加などが期待でき、売上の拡大につながるでしょう。
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